89 人が光るということ。

その後富国強兵の言葉の下に軍国主義に走り手痛い敗戦を迎えるのですから歴史は常に悲惨さと共にあります。明治の「革命」も八十年も満たない年月で瓦解し今日の日本になるのですが、現在のわたしたちの豊かな生活と比べれば、彼らが強い悲劇の中で生きてきたと考えるのもそのためです。西郷隆盛がいい言葉を残しているからいい人物ということになるのですが、彼を始め下級武士や農民が世の中を変えようとしたのは、公明・公正・公平さが著しくないとわかってきたからでしよう。その維新の立役者たちがきれいに改革をやったということではなく、見方を変えれば多くの人たちを亡き者にしているのは明らかですし、また時代が変われば彼らの行動も違ったものになってきます。間違いないのは反徳川も新徳川も多くの屍の上に維新は築き上げられたということです。英雄は常に多くの人たちを消して行きます。それはいいこととか悪いことというのではなく、命を賭けた闘いはモラルの外にあるのですから平時の判断で見ることはできません。それでも西郷隆盛に人気があるのは、生き方の根底に私利私欲に走らなかった清さを読み取ることができるからではないかと考えます。清廉潔白という人間はそうそうにいないものです。少ないから逆に人物が光のです。わたしはそのことに関しては他の元勲よりも伊藤博文にも感じますが、

軍部にはそういった匂いを感じにくいので見方もきつくなるのかもしれませんが、軍人や軍隊が大切なのはわかっています。ただし武力を自分の権力として見る人間が必ず出てきますからその兼ね合いが難しいと思うのです。西郷隆盛がいい言葉を残しているということは、彼の意識にそういった思考があるからだと考えています。